要点
- IEEPA 関税の還付は自動では戻りません。請求できるのは、米国の輸入者か、その申告をした通関業者です。
- いま受け付けているのは、清算の前か清算から80日以内の申告などです。清算が確定した申告の受付時期は決まっていません(2026年9月12日時点)。
- 申告データから IEEPA 関税の行と清算日を抜き出せば、請求できる申告と期限はプログラムで出せます。
米国の連邦最高裁判所は2026年2月20日、IEEPA(国際緊急経済権限法)は大統領に関税を課す権限を与えていない、と判断しました。これを受けて、米国の税関(CBP)は、払われた IEEPA 関税の還付を始めています。
ただ、還付は自動では戻りません。請求できるのは、米国で輸入者として申告した者(IOR)か、その申告をした通関業者です。対象の申告番号を一覧にして、CBP のシステムから請求します。この記事では、その洗い出しを AI とプログラムでどう進めるか、日本の輸出者が何を確かめるかを説明します。
なお、IEEPA 関税がなくなったあとも、別の法律に基づく関税はかかっています。還付の対象は IEEPA 関税だけです。
これまでの経緯
米国の連邦最高裁判所が、IEEPA では関税を課せないと判断した
CBP が、この日以降の輸入分から IEEPA 関税の徴収を止めた。同じ日から、通商法122条に基づく10%の追加関税が150日間かかった
国際貿易裁判所が、清算の前か後か、確定したかどうかを問わず、IEEPA 関税を除いて清算し直すよう命じた
CBP が、CAPE と呼ぶ仕組みで還付の受付を始めた(第1段階)
政府が、国際貿易裁判所の命令に対して控訴した
還付の受付の第2段階が始まった
通商法301条に基づく措置が始まった。日本からの輸入品には、通常の税率と合わせて12.5%がかかる(通常の税率が12.5%以上の品目と、通商拡大法232条の対象品目は上乗せなし)
清算が確定した申告を扱う第3段階の開始が延期された。9月12日時点で、新しい日程は出ていない
誰が請求し、誰にお金が戻るか
還付は、米国財務省から輸入者の米国の銀行口座に振り込まれます。受け取るには還付用の口座の登録が必要で、還付には利息が付きます。
日本の商社が関税の分を値引きで負担していた場合、戻ったお金の分け方は、輸入者との話し合いで決めます。
日本の商社の立場は、取引の形によって分かれます。
- 米国子会社が輸入者になっている場合は、子会社が請求します。
- 米国の取引先が輸入者の場合は、取引先が請求します。関税の分を値引きなどで負担していたなら、精算のしかたを取引先と話し合います。
- 日本の会社が自ら米国の輸入者として申告している取引は、請求と受け取りのしかたを、米国の通関業者に確かめます。
請求は、米国の税関の電子申告システム(ACE)から行います。輸入者は ACE のアカウントを持ち、還付を受け取る米国の銀行口座を登録しておく必要があります。還付を輸入者以外の相手(通関業者など)で受け取る場合は、CBP の Form 4811 で受取先を指定します。還付は、請求が受け付けられてから60〜90日ほどで振り込まれる見込みです。
いま請求できる申告
CBP は、申告の状態によって受付の時期を分けています。ここで言う「清算」は、申告した関税の額を CBP が確定させる手続で、通常は輸入から314日以内に行われます。清算から90日以内なら CBP が自ら清算をやり直せるため、第1段階は清算から80日までの申告を対象にしています。
| 申告の状態 | 還付の受付 |
|---|---|
| 清算の前、または清算から80日以内 | 第1段階。2026年4月20日から受け付けている |
| 後から金額を確定させる申告(reconciliation)の対象で、その申告をまだ出していないもの | 第2段階。2026年6月29日から受け付けている |
| 清算が確定したもの | 第3段階。受付の時期は決まっていない |
清算が確定した申告の扱いは、国際貿易裁判所の命令に対する政府の控訴が続いていて、まだ決まっていません。また、戻し税(drawback)を請求中の申告や、異議申立て(protest)の手続中の申告などは、いまの受付の対象外です。
作業が止まる理由
対象になる申告は、輸入の件数だけあります。米国向けの輸入が月に30件あれば、1年で360件です。
申告ごとに、IEEPA 関税がいくら含まれているか、清算日はいつか、どの段階で請求できるかを確かめる必要があります。IEEPA 関税は、関税率表の第99類の番号で申告の行に載っています。日本からの輸入品では、この番号が途中で変わっています。
| 第99類の番号 | 中身 |
|---|---|
| 9903.01.25 | 基本の相互関税(10%) |
| 9903.02.30 | 日本向けの相互関税。2025年9月15日まで使われた番号 |
| 9903.02.73 | 通常の税率と合わせて15%になるように上乗せする分。2025年8月7日にさかのぼって適用 |
| 9903.02.72 | 通常の税率が15%以上の品目。上乗せがないので、この番号だけの行から還付は出ない |
自動車と部品にかかっている 9903.94.40〜9903.94.43 は、IEEPA ではなく通商拡大法232条の番号で、還付の対象ではありません。番号を取り違えると、請求額が合わなくなります。
期限を試算する
清算日を入れると、第1段階の期限(清算日から80日)と、異議申立ての期限(清算日から180日)を計算します。基準日には、開いた日の日付が入ります。
清算日からの期限の試算
暦の日数で足した目安です。実際の期限は、CBP の案内と通関業者で確かめます。入力した日付は、この画面の中だけで計算します。
作業の流れ
作業は6つの段階に分かれます。段階ごとに、AI にさせること、プログラムにさせること、人が決めることを分けておきます。
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1
申告データを集める
人米国子会社や取引先、通関業者に、申告データを頼む
AI形式の違うファイルを読み取り、1つの表にそろえる
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2
IEEPA 関税の行を抜き出す
プログラム第99類の番号で行を抜き出し、申告ごとに関税額を足す
人使う番号の一覧を、CBP の最新の案内で確かめる
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3
清算日から段階と期限を出す
プログラム清算日に80日と180日を足し、請求できる段階と期限を出す
-
4
請求する申告の一覧を作る
プログラム請求する申告番号を、CBP の決まった形のファイルにする
人輸入者か通関業者が、CBP のシステムから請求する
-
5
取引先と話す材料をそろえる
AI契約書やメールから、関税の負担の取り決めを探して一覧にする
人精算のしかたを取引先と話し合う
-
6
案内の変更を見張る
AICBP の案内や裁判の動きを読み、自社の申告に関係する変更をまとめる
人請求の時期を決める
1. 申告データを集める
米国の税関の電子申告システム(ACE)には、申告の明細を出す ES-003 というレポートがあり、IEEPA 関税の行には印が付いています。まず、輸入者か通関業者に、このレポートを出してもらうよう頼みます。
取引先や通関業者によって、届くファイルの形式はばらばらです。列の名前や並びが違うファイルは、AI で読み取って1つの表にそろえます。そろえたあとは、申告ごとの関税額の合計が元のファイルと合うかを計算で確かめます。
2. IEEPA 関税の行を抜き出す
表2の番号をもとに、IEEPA 関税の行をプログラムで抜き出し、申告ごとに関税額を足します。番号の一覧は変わることがあるので、使う前に CBP の案内で確かめます。232条の番号は外します。
3. 清算日から段階と期限を出す
申告ごとの清算日から、請求できる段階と期限を計算します。清算から80日を過ぎると、第1段階の対象から外れます。異議申立ての期限は、清算から180日です。日付の足し算なので、プログラムで間違いなく出せます。
| 申告 | 清算の状態 | IEEPA関税 | 請求の段階 | 期限の目安 |
|---|---|---|---|---|
| A | 清算の前 | 12,400ドル | 第1段階 | 清算されたら、その日から80日以内 |
| B | 2026年7月1日に清算 | 8,300ドル | 第1段階 | 第1段階は9月19日まで。異議申立ては12月28日まで |
| C | 2026年3月2日に清算 | 5,100ドル | 第3段階 | 受付の時期は決まっていない |
期限の近い申告から請求を急ぐよう、この表をもとに米国側と相談します。
4. 請求する申告の一覧を作る
請求は、申告番号だけを並べたファイルを、CBP のシステムに上げて行います。1つのファイルに入れられるのは9,999件までです。ファイルはプログラムで作り、請求は輸入者か通関業者が行います。
5. 取引先と話す材料をそろえる
関税の分を値引きで負担したか、別に上乗せして受け取ったかは、契約書やメール、見積の改定の記録に残っています。AI にこれらを読ませ、取引先ごと・時期ごとに取り決めを一覧にさせます。これと2・3で出した申告ごとの関税額を並べれば、話し合いの材料になります。
6. 案内の変更を見張る
還付の受付は段階を追って広がっていて、案内も更新されています。CBP の案内や裁判の動きを AI に読ませ、自社の申告に関係する変更だけをまとめさせます。請求の時期を決めるのは人です。
よくある誤解
IEEPA 関税が無効になったので、米国の追加関税はすべて戻る
戻るのは、IEEPA に基づいて払った関税だけです。通商拡大法232条の関税(自動車・部品など)や、2月24日以降にかかっている通商法122条・301条の関税は、この還付の対象ではありません。
待っていれば、自動で戻る
還付は、輸入者か通関業者が CAPE で請求して、はじめて手続が進みます。
日本の輸出者も、CAPE で請求できる
請求できるのは、米国の輸入者か、その申告をした通関業者です。自社が輸入者でない取引は、輸入者である取引先と話し合います。
申告を訂正(PSC)すれば、還付を受けられる
申告の訂正(PSC)で IEEPA 関税の還付を求めることは、禁止されています。
第99類の番号が付いた行なら、どれでも還付額が出る
日本からの輸入品で使われた 9903.02.72 は、通常の税率が15%以上の品目に使う番号で、上乗せがありません。この番号だけの行から、還付額は出ません。
AI に任せないこと
- 請求するかどうか、いつ請求するかの判断
- 対象の番号の一覧を決めること。CBP の案内で確かめます。
- 取引先との精算のしかたを決めること
- 請求そのもの。輸入者か通関業者が行います。
顧客名や金額が入ったデータを外部の AI サービスに入れる場合は、入力した内容が学習に使われない契約や設定になっているかを、先に確かめます。
社長が決めること
- 米国子会社や取引先に、申告データを出してもらうよう頼むこと
- 関税を値引きなどで負担していた取引について、取引先と精算を話し合うかどうか
- 期限の近い申告から請求を急ぐよう、米国側に頼むこと
出典
- 米国連邦最高裁判所「Learning Resources, Inc. v. Trump」(2026年2月20日)
- CBP「IEEPA Duty Refunds」、「CAPE に関する案内」(2026年7月更新)
- CBP「CSMS #67834313」(2026年2月22日)、「CSMS #68340863」(2026年4月13日)、「CSMS #69066837」(2026年6月29日)
- CBP「CSMS #66242844」(2025年9月15日)、「IEEPA FAQ」
- 米国国際貿易裁判所「Slip Op. 26-94」(2026年8月13日)
- ホワイトハウス「通商法122条に基づく一時的な輸入課徴金の布告」(2026年2月20日)
- 米国通商代表部「通商法301条に基づく措置の発表」(2026年7月23日)
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)「米税関、IEEPA関税を還付する「統合通関管理・処理システム(CAPE)」を4月20日から運用開始」(2026年4月13日)
- 日本貿易振興機構(ジェトロ)「ビジネス短信」(2026年8月27日)、「IEEPA関税還付プロセスの解説」