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Global Compliance

【2026年版】PFAS規制まとめ米国・EU・日本の最新動向と企業がやるべきこと

Wing編集部

この記事でわかること

🌍

PFAS規制の全体像

なぜ今、世界中で規制が強化されているのか

📅

2026年の主要期限

米国・EU・日本で何がいつ施行されるか

今すぐやるべきこと

企業が取るべき4つのアクション

1. PFASとは? なぜ「永遠の化学物質」と呼ばれるのか

PFAS(ピーファス)とは、撥水・撥油・耐熱性に優れた人工の化学物質群の総称です。フライパンのコーティング、防水スプレー、半導体の製造工程、食品包装など、私たちの身の回りで幅広く使われています。

PFASが問題なのは、自然界でほとんど分解されないこと。水や土壌に残り続け、人体にも蓄積します。このため「Forever Chemicals(永遠の化学物質)」と呼ばれ、世界中で規制が急速に進んでいます。

PFASが使われる理由

💧 撥水性 — 水を弾く
🛢️ 撥油性 — 油汚れに強い
🔥 耐熱性 — 高温でも安定
絶縁性 — 半導体に不可欠

PFASの問題点

♻️ 自然界で分解されない
💧 水・土壌に蓄積し続ける
🧬 がん・免疫障害との関連
📊 対象物質は12,000種類以上

12,000+

PFAS化合物の数

30+

規制を導入した国・州

2026

規制施行ラッシュの年

⚠️ ビジネスへの影響

PFAS規制は単なる環境問題ではありません。製品が市場に出せるかどうかを左右する、ビジネスの存続に関わる問題です。規制に対応できなければ、出荷停止・罰金・取引先からの排除といったリスクに直面します。

2. 【米国】連邦と州の「二重規制」を理解する

米国のPFAS規制は、連邦政府(EPA)の報告義務と、各州の独自規制(販売禁止)の二重構造になっています。どちらも2026年が大きな節目です。

米国PFAS規制の構造

FEDERAL 連邦規制(EPA)

TSCA 8(a)(7) 報告義務

  • • 2011〜2022年のPFAS製造・輸入を遡って報告
  • • 報告開始:2026年4月
  • • 対象:1,462種類以上の物質
  • • 「合理的に確認可能な」すべての情報
STATE 州法(販売禁止)

2026年に5州以上で施行

  • • コロラド・メイン・バーモント:1月〜
  • • ミネソタ・コネチカット:7月〜
  • • 対象:調理器具、化粧品、包装材等
  • • 州ごとに基準が異なる「パッチワーク」

連邦のTSCA報告:何がどう大変なのか?

EPA(環境保護庁)は、過去にPFASを製造・輸入した企業に対して、2011年まで遡って報告することを求めています。これは前例のない規模の規制です。

TSCA報告のスケジュール

対象 報告開始 最終期限
一般の製造・輸入業者 2026年4月 2026年10月
成形品のみ輸入する小規模事業者 2026年4月 2027年4月

💡 ポイント:過去に輸入した製品の中にPFASが含まれていたかを、15年前まで遡って調査する必要があります。データ保持期間やサプライヤーの変更を考えると、極めて困難な作業です。

州法のインパクト:ミネソタ州「アマラ法」

ミネソタ州の「アマラ法」は、PFAS規制史上、最も包括的な州法と言われています。他州のモデルにもなりつつあります。

🚫

販売禁止

2026年1月〜
調理器具、化粧品等

📝

全製品の報告義務

2026年7月〜
免除なし

🏥

医薬品も対象

FDA規制品も
報告が必要

施行日 内容 対象例
コロラド 2026年1月 販売禁止 清掃用品、調理器具、スキーワックス
メイン 2026年1月 販売禁止 清掃用品、化粧品、繊維製品、家具
バーモント 2026年1月 販売禁止 食品包装、化粧品、カーペット
ミネソタ 2026年7月 報告義務 PFAS含有のすべての製品
コネチカット 2026年7月 ラベル表示・報告 アパレル、家具、化粧品

3. 【EU】世界で最も厳しいPFAS規制が動き出す

EUは「個別の物質」ではなく、PFASという物質群をまるごと規制する方針を打ち出しています。さらに、食品包装については2026年8月から極めて厳しい基準が適用されます。

EU PFAS規制の2つの柱

REACH 包括的制限案

1万種類以上のPFASを一括禁止

  • • 5カ国共同提案(2023年)
  • • 2026年末:最終意見
  • • 2027〜28年:段階施行
  • • 「必須用途」のみ移行期間あり

PPWR(包装規則)← 直近の課題

食品包装のPFASを厳格制限

  • 2026年8月12日から適用
  • • 意図的な添加も混入も区別なし
  • • 再生紙のコンタミも不適合の可能性
  • • 実際の分析による検証が必要

PPWR の閾値:どれくらい厳しいのか?

PPWR が設定する上限値

個別PFAS(非ポリマー) 25 ppb 未満
個別PFASの総和(非ポリマー) 250 ppb 未満
全フッ素含有量(ポリマー含む) 50 ppm 未満

※ ppb = 10億分の1、ppm = 100万分の1。基準を超えた包装材はEU市場への投入が禁止されます。

⚠️ 要注意:PPWRは「意図的な添加」と「非意図的な混入」を区別しません。再生紙を使った包装材でも、環境中の残留PFASにより基準を超える可能性があります。サプライヤーからの証明書だけでなく、実際の分析データが必要です。

4. 【日本・アジア】化審法改正とアジア各国の動き

日本を含むアジア各国も、国際条約(POPs条約)に基づいてPFAS規制を強化しています。2026年は日本・台湾・韓国でそれぞれ新しい規制が施行されます。

2026年 アジアのPFAS規制タイムライン

🇹🇼 台湾 2026年1月1日

269種類のPFASを「懸念化学物質」に指定。0.1%以上含有で当局承認が必要に。四半期ごとの報告義務。

🇯🇵 日本 2026年6月17日

PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)を化審法「第一種特定化学物質」に指定。製造・輸入・使用が原則禁止に。

🇰🇷 韓国 2026年中

K-REACHに基づく化学物質登録期限が段階到来。100種類以上のハザード評価結果を更新。SDS改訂作業が必要。

日本企業が特に注意すべきこと

🔍

サプライチェーン深部の調査

PFHxSは、かつてPFOAの代替品として広く使われました。部品の表面処理や接着剤の添加剤など、サプライチェーンの奥深くに残存している可能性があります。

🚢

輸出規制の強化

経産省は「輸出貿易管理令」を改正し、PFOSやPFHxSを含む潤滑剤・コーティング剤の輸出に事前承認を義務化する方針です。

5. 貿易実務で押さえるべきポイント

PFAS規制は、製品の「中身」だけでなく、貿易手続きや通関プロセスにも大きな影響を与えます。

PFAS規制が貿易実務に与える影響

📦

製品設計・調達

含有物質の特定
サプライヤー調査

🛃

通関・輸出入

HSコードの正確な分類
規制物質の申告

🏭

販売・廃棄

DPP(デジタル製品パスポート)
廃棄方法の指定

HSコードの落とし穴

HSコード(関税番号)の誤分類は、単なる申告ミスでは済みません。規制物質の違法輸入とみなされ、出荷の差し止めや罰金につながる恐れがあります。

WCO(世界税関機構)は2026年と2028年にHSコードを更新予定で、PFAS関連の専用コードも検討されています。法規制チームと通関チームがリアルタイムで情報を共有する仕組みづくりが重要です。

デジタル製品パスポート(DPP)とは?

EUが導入するDPP(Digital Product Passport)は、QRコードなどを通じて製品の化学物質情報・リサイクル方法をいつでも確認できる仕組みです。

📱

QRコードで情報公開

含有物質、リサイクル率を誰でも確認可能

🔄

ライフサイクル全体をカバー

製造から廃棄まで追跡する「デジタル・ツイン」

🏢

欧州市場の必須条件

対応しなければEU市場に出せない

6. AIで変わる化学物質管理のかたち

12,000種類以上のPFASを手作業で管理するのは現実的ではありません。AIを活用した次世代のプラットフォームが、複雑な規制対応を効率化します。

AI化学物質管理プラットフォームの全体像

1

データ収集の自動化

AIがSDS(安全データシート)のPDFから化学物質名・CAS番号・濃度を自動抽出。手入力の手間をゼロに。

2

規制リストとの自動照合

抽出したデータをOECD・EPA・REACHなどの規制リストとリアルタイムで照合。該当物質を即座に特定。

3

リスク予測と優先順位付け

サプライヤーからの回答が「不明」でも、製品特性からPFAS含有の可能性を予測。ハイリスクな部品から優先的に調査。

4

規制変更の24時間監視

世界中の法規制の変更をAIが監視し、自社製品への影響を自動通知。見落としを防止。

❌ 従来の管理方法

  • • Excelでの手動管理
  • • SDSをPDFで1件ずつ確認
  • • 規制改定を人力でウォッチ
  • • サプライヤーへメールで個別照会
  • • 対応漏れ・ミスのリスク大

✅ AIプラットフォーム

  • • データの自動収集・整理
  • • SDSをAIが解析・照合
  • • 規制変更を24時間自動監視
  • • サプライヤー調査を一括管理
  • • 工数65%削減、ミス90%低減

7. 今すぐ取るべき4つのアクション

2026年の規制施行に向けて、「受け身のコンプライアンス」から「攻めの化学品管理」への転換が必要です。

1

データ資産の棚卸し

TSCA 8(a)(7)に備えて、2011年以降の購入履歴・輸入書類・サプライヤー回答を統一的なデジタル形式に変換・蓄積します。散在するデータの正規化が最優先課題です。

2

サプライヤーとの「深い対話」

「PFASが入っていますか?」という単純な質問から、「PFASはどんな機能で使われていますか?代替は可能ですか?」という深い対話へ移行します。将来の禁止に備えた先行的な代替開発を可能にします。

3

部門横断の「PFASタスクフォース」設置

PFASはもはや環境部門だけの問題ではありません。法務・EHS・調達・貿易・ITが連携するチームを立ち上げ、全社的な対応体制を構築します。

4

AI管理プラットフォームの導入

数万点のSKUのリスクを瞬時に可視化できるプラットフォームで手動プロセスを自動化。特にDPP対応は、欧州市場での競争力維持に不可欠です。

まとめ

PFAS規制は、化学物質管理の「透明性」と「責任」の基準を根本的に引き上げるパラダイムシフトです。

単なるチェックリストではなく、AIで複雑な法規制を解釈し、サプライチェーンの死角を照らし出す「インテリジェンス・レイヤー」が、これからのグローバル貿易を支えるインフラになります。

PFASは「永遠の化学物質」かもしれませんが、企業が取るべき態度は、デジタル変革で持続可能な未来へ舵を切ることです。

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